事業内容

【特別編】「放置すればリスク、先取りすればチャンス!」 データやしくみを組織の味方にする。KES

【特別編】「放置すればリスク、先取りすればチャンス!」
データやしくみを組織の味方にする・KES

【はじめに】

KESとは、中小企業(や組織)にとって「簡潔で取り組みやすく、低コストなEMS(環境マネジメントシステム※1)」。
当初、京都の地域だけだったのが全国展開へ、製造業から全業種を対象へ、と拡がってきました。
また、常に中小企業のことを考えて、社会の動きを捉えながらKESの規格はバージョンアップされてきました。

リスクをへらしてチャンスを増やす。
データやしくみを味方にする。
社会に必要とされる企業(組織)になる。

今、KESに取り組む価値・メリットについてお聞きしたことをもとに、KESについてご紹介します。

(※1)環境省:環境マネジメントシステム
https://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/04-1.html

【お話をして下さった方】

KES環境機構
https://www.keskyoto.org/index.html

  • 特定非営利活動法人KES環境機構 専務理事 長畑 和典 様
長畑さま
長畑さま

【取材日】

2022年9月13日(火)

【内容】

リスクをどう管理するのか

企業も団体もそうですが、組織の活動には色々なリスクが考えられます。
リスクには、頻度が高いものと低いものがあります。また、影響が大きなリスクと小さなリスクがあります。
そして、どのようなリスクなのかによって対策も変わってきます。

「例えば災害などは、≪頻度が少なく影響が大きな≫リスク。こういったものの対策には保険を掛けたりします(リスクの移転といいます)。逆に、日常業務での小さな確認ミスなどは、≪頻度が多くて影響が小さな≫リスクです。これは、マネジメントシステムで管理をすることができます」

KESは、環境に影響を及ぼす項目をマネジメントシステムで管理します。
この「環境影響項目」は、放置すれば企業のリスクに、先取りすれば逆にチャンスになります。

リスクをマネジメントして、チャンスを活かすことに繋げる

例えば、自然環境に悪影響を及ぼす物質は、法律などで使用が規制されています。
もしその規制が強化されて、これまで使用していた素材や化学物質などが使えなくなった場合、ぼんやりしていたら市場が無くなってしまうというリスクになります。
逆に、先取りして、規制された物質を使用せずにすむ対策をしたり対応製品を開発できれば、ビジネスチャンスが拡大します。

環境影響項目には廃棄物やエネルギーも入ります。
産業廃棄物の対応をしなければ処理費用増加のリスクが、逆に再資源化やリサイクルを推進すればコストダウンにつながります(場合によっては原材料の安定確保にも)。
エネルギー管理ができていれば、エネルギーコストの低減にもつながります。

変化していく社会の動きに適切に対応できればチャンスに、できなければリスクになっていきます。
適切に対応するためには、企業(組織)は、社会にとってどんな位置付けなのかを把握しておく必要があります。

「企業(組織)の活動は様々ですが、KESでは、企業活動をすることによってどのような環境影響項目があり、それをどう管理していくのかを考えます。その際にKESは、その企業は社会のなかでどのように位置づけされているのか、望ましいあり方(存在意義)を考える視点を提供します」。

KESなどの環境マネジメントシステムに取り組むことは、リスクをへらしてチャンスを増やすことにもつながっています。

KESパンフレットより
KESパンフレットより

具体的にKESではどんなことをするのか

KESは、「自社による環境宣言」を行って、その方針に基づいた「自社でのKESの仕組み」を作ります。KESで取り組む具体的な項目を決めて、実行体制を定めます。

KESで取り組む項目は、自社で必要な項目(環境影響項目)にされることが多いです。例えば、

  • 電気の使用量を削減していきたい→削減目標を設定する。毎月の電気使用量を確認して達成しているかをチェックする担当者を決める。達成しなかった場合の対策を決めておく。
  • 工場から出る排水について、法律で定めている基準をきちんと守る必要がある→法律の基準より少し手前に自主基準値を設定して、チェックするタイミングや担当者を定める。自主基準を超えた場合の対策を定めておく。
  • 不良率を減らして返品を減らしたい(資源や配送の無駄を削減することができる)等

また、自社の事業そのものを環境配慮型・持続可能型にするために目標設定をされる場合もあります。例えば、

  • 環境配慮の製品/サービスの開発や販売促進を目標にする
  • 出版社が環境に関する本の出版数を目標にする
  • 勉強会開催、最新情報共有の実施を目標にする

いずれも、「目標を設定して」「実施状況を確認するタイミングと担当者を決めて」「目標達成ができなかった際の対策を決めておく」ことで、実行責任を明確にして、確実に実行できる仕組みにします。

KES登録事業者になるには、KES環境機構のアドバイスを受けながら、自社のKESの仕組みを構築し(実施体制と自己評価体制を作る)、KES審査を受けて適合を認められる必要があります。

KES規格は、ISO14001の基本コンセプトと同じですが、本質的な特長を活かしながら用語や規格内容をシンプルにしたものです。また、事業者の必要に応じて「ステップ1」「ステップ2」を選択でき、ステップ2からさらに発展した「ステップ2SR(環境を含む社会的責任への取組み)」「ステップ2En(環境+エネルギー管理)」に移行することもできます。

また、KESの審査員はボランテイアベースで運用されているため、低コストでの審査・コンサルテイングを実施しています。

データを味方に。情報共有で社員を同じ方向に。そして第三者の視点を活用できる。

企業活動ではたくさんのデータ(数字)を取り扱います。データは企業の現状を表すもの。問題点もデータの中から見つけることができます。
KESに取り組むことで、「環境」という視点からデータを見ることができます。

また、KESを通じて組織内の「情報共有」をしっかりすることができます。
KESは、ビジョン、問題点、課題、目標、施策、活動結果などを情報共有できるしくみになっています。
情報共有しないといけないことはたくさんあるし、どこまで共有できるのかによって、「組織として」動いた時のパワーが違います。

KESは定期的に審査があります。第三者である審査員がデータやしくみについて確認して外部の目で指摘します。外部の目があると引き締まりにもつながり、良い評価をもらえるともっと頑張ろう、となります。中小企業は外部からの指摘を受けるチャンスが少し少ないこともあるので、よい機会になると言われることが多いそうです。

KESは答えを導き出すための「しくみ」であって「答え」そのものではない

KESは「しくみ」なので、KESさえすれば大丈夫というわけではありません。しかし、取り組むことで良い「きっかけ」にすることができます。

「秋葉さんのおフダ(火防)を例に挙げますと、あれは別におフダが直接火事を防いでくれるわけではありません。でも、それが目に入ることで火の取り扱いに気を付けるきっかけになります」。

KESの取組と「PDCA」「規格」

KES(環境管理システム)を導入するということは、管理の体系を、「仕組み」として組み込むことです。
その管理システムが「KESの規格(スタンダード)」に適合しているのかどうかを、審査員(KES環境機構)が第三者の立場で審査し登録します。

規格とは、活動によって「意図した成果」の達成を確実にするためにPDCAに沿ってまとめたもの。
本当に意図した成果が出たかを確認して、フィードバックする。結果によって次の計画をきちんと変えていく柔軟性を持つ=レジリエンスを確立することになります。

形骸化しないために

EMSというと、「形式的な書類が増えそうだ」「手間が増えて大変そうだ」というイメージを持ってしまいそうですが、それはあまりうまくいっていない形骸化状態とのこと。

KESのしくみが、ミスをへらす・欠品をなくす・良いものを作るなど、事業活動の成果に繋がっているか。また、労働環境の改善や、法令順守を確実に実行することなどに繋がっているか。
同じ「する」でも、ちゃんと有効に働いているのかということには注意しないといけない、とのこと。
書類がそろっていて、すべきことをすれば「適合」となり、審査には通りますが、定めた手順を「ただ実行する」だけではなく、「効果的な方法になっているのか?」をちゃんと見ないといけません。
「行なう」だけで満足してしまわないように、気を付けたいですね。

KESパンフレットより
KESパンフレットより

管理の空白地帯をなくそう。組織のトータルマネジメント実現へのゲートウェイに。

企業活動を管理するしくみはいくつかありますが、バラバラに管理されがちです。
製品やサービスの「品質管理」。法律にもとづく「環境汚染を防ぐ管理」や「労働の管理」。
そうすると、企業活動の中に、場合によっては隙間ができてしまう。その隙間(=空白地帯)は管理ができないことになります。

理想は、空白地帯のない「トータルマネジメント」です。そのために、概念を広げて活動しましょう、と伝えているとのこと。
環境汚染を防ぐ活動だけでなく、さらに環境保護に繋がる活動へ。法的要求だけでなく、世の中から期待されるニーズにこたえられるように。突き詰めていくと、サスティナビリティな活動に繋がっていくと思います。

「SDGsについても、企業の事業活動をSDGsに紐づけをして、そこで終わるのではなくもう一度結合させる必要がある」と長畑さん。
SDGs達成に向けて、民間の資金をもっと活用していくために、有効性の基準をSDGインパクトというもので示そうとしています。もっと民間資金が活用されないとSDGsの達成はできないだろうと言われています。

最後に長畑さんに、「SDGsを逆にみると、持続可能な社会をどう目指していきたいのかを別の視点で見ることができて、面白い」ということをご紹介いただきました。

SDGs17のゴールの裏返し
SDGs17のゴールの裏返し

KESに登録するには?

KESパンフレットより
KESパンフレットより

KESはどのようなものかを知りたい方や、登録を検討されている方は、まずは「構築講座」へご参加ください。
KES環境機構:講座・セミナー情報
https://www.keskyoto.org/about/index.html

【おわりに】

社会から企業が求められ、期待されている事柄は、時代の流れによって変わってきました。ただ便利な製品・サービスだけでなく、持続可能・サステナブルが求められる現在。
ESG経営、脱炭素経営が求められるいま、何をどうすればという企業・組織の方には、KESというしくみを活用するのは、大変有効な方法だと改めて感じました。

(以上)