事業内容

インタビュー「交通という視点から、持続可能なまちをつくる」

「交通という視点から、持続可能なまちをつくる」
~第9期推進員 府内各地で活躍中!~ 今回は大國 正明 さん

都市における持続可能な移動手段の促進を目指すイベント「京都カーフリーデー」の実行委員長として活躍されている大國さん。これまではJR二条駅西口のBiVi二条を中心とした啓発イベントをされてこられましたが、前回の2019年はシェアサイクルのモニター調査や普及啓発のための利用料金割引など、社会実装をにらんだ取り組みを展開されています。


■京都のまちと自転車

9期推進員大國さん
大國正明(おおくにまさあき)さん

大國さんは、もともと自転車移動中心の生活をしてこられました。「昔は、駐輪場がなかったり、道路の自転車用レーンも設定されていなかったりと、今よりも自転車移動の環境は悪かったです。」と振り返ります。

「エコに強い関心があったわけではなく、京都の歴史やまちあるきが好きだっただけ」と大國さん。京のアジェンダ21フォーラム・交通ワーキンググループ(交通WG)の方と知り合いになり、様々な取り組みに参画するようになりました。「昔、交通WGとエコツーリズムWGが合同で移動についての調査を行いました。当時は車で京都に来る観光客が多く、渋滞もひどかった。駐輪場を増やす、バスの乗り継ぎを便利にする、一日乗車券を各社共通パスにするなど、いくつも提言をまとめて京都市に提出しました。その時の提言内容が、だんだん実現してきています」。

「四条通の歩道拡幅の実証実験を行ったときは、周辺のコインパーキングをいくつか借りて駐輪場にして、1週間に200人のボランティアで駐輪場の管理をしました。どこの駐輪場も一杯になるぐらい自転車が使われていました。アンケート調査もして、あちらの店こちらの店と寄るのに自転車は便利、これだったらもう一軒回れる、ということを聞いたり。京都のライフスタイルの中で、自転車は重要だということがあらためて明らかになりました」。実証実験で効果が確認されたこともあり、2015年秋には実際に四条通歩道拡幅事業が実現しています。

まだまだ自転車が使いやすい環境が充分に整っているわけではない、と大國さんは話します。「でも、そこを良くして移動がスムーズになれば、地域もうるおってくると思います。実証実験をするときには、京都市とも様々なやり取りがありました。また、地域の方からも色んなご意見が届きます。観光のためにやったという人も、環境のためにやったという人もいるけれども、つまりはまちのため、地域のためにやったと思っています」。

 

■交通は手段

賞
これまでのカーフリーデーイベントでも様々な賞を受賞

学生マンションの大家さんでもある大國さんから「最近は自転車に乗れない学生がいる」というお話も教えていただきました。「意外とたくさんいますよ。郊外だと自転車に乗って10分で行ける場所に店がない。家族で車でショッピングモールとかに行ってしまうんです。モールには何だってあるし、帰りに国道沿いのチェーン店で食事をしてしまう。自転車に乗る機会がなくなりますよね。徒歩や自転車で行ける商店街のシャッター化にもつながってしまいます。暮らし方そのものが変わってきていると感じます。」

「交通は手段だ」と大國さんの言葉は明確です。「ただ電車を走らせたら良いということではないと思います。乗り物=交通は手段で、目的ではない。買い物に行く、病院に行くなどの目的がないと使わない。目的を含めて考えると、自然とまちづくりやまちの在り方に注目するようになります」。

公共交通の利用者が減ると、便数が減って、ますます乗客が減ります。そんな中だからこそ行われた、利用促進のためのユニークな事例を教えていただきました。「以前、京都府北部の地域で、京都交通さんと地元の子育て支援NPOの方が、子どもたちにバスの中で遊んでもらい、バスの車体に子どもの手形をつけて、そのまま町の中を走らせる取組をされました。親御さんも含めてバスにぐっと親しみを持ってもらえますよね。また、舞鶴市さん・京都交通さん・市民の皆さんの取り組みで、ランバスというのをされたことがあります。朝のジョギングをするグループの方から、行きは良いが帰りがしんどいと(笑)。そこで、帰りの時間に合わせてバスを走らせたそうです。行きはジョギング、帰りはバスです」。大國さんもアイデア出しの部分で少しお手伝いされたとか。「 “バス、意外と使えるなあ”と思ってもらえるといいですよね」。

 

■ひとつのことだけを見るのではなく

カーフリーデー
「京都カーフリーデー2018」イベントの様子

「2050年に実質ゼロ、ということを考えると、もう、社会の仕組みを変えていかないと無理ですよね。交通でもそうです。結構な予算も必要だし、様々な意見もあり、きれいごとで済まされない話もあるし、それなりにリアリティも必要です。電車を作ればいいということでなく、都市計画や住み方など、様々なファクターがうまく回るようにしないといけない」。交通という切り口でまちづくりに取り組んでいる大國さんの視点は、様々な物事まで広がっていて、さらに将来に向けた時間軸をも感じます。
昨年、大國さんは動物愛護フェスティバルでペットと温暖化をテーマに啓発をされました。「夏の気温が上がってアスファルトは熱く、犬もお散歩ができない。ストレスもたまり、お行儀も悪くなる。そうすると飼い主も大変です。温暖化問題を伝えるのに、そんな切り口もある」。
これからも、枠にとらわれずに活動を広げていきたいと大國さん。エコとアートも親和性が高いと感じておられるとか。「2050年に向けて、気持ちの上でも、明るく展望が開けるように。どうしていったらいいのかなあ、と考えています」。

京都カーフリーデー実行委員会facebook

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