特集 島田課長に聞く「2030年までの京都府の気候変動対策」
■2021年3月「京都府地球温暖化対策推進計画」改定
昨年10月、菅総理のゼロ宣言。今年4月、気候サミットでの46%削減目標の表明。そして5月には実質ゼロを明記した地球温暖化対策推進法が改正。「脱炭素」に向けた国の動きが大きく加速しています。
京都府においても、昨年2月、知事が「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を目指すことを宣言し、昨年12月に京都府温暖化対策条例(以下、条例)を改正。続いて今年3月に京都府地球温暖化対策推進計画(以下、推進計画)が改定されています。
京都府ではどのような施策・取組を計画されているのか、京都府 府民環境部 地球温暖化対策課長の島田和幸さんにお話を伺いました。
■まず、目標を教えてください。
京都府では、全国の都道府県で2番目に、条例において「2050年度までに温室効果ガス排出量実質ゼロ」を掲げました。また、当面の目標として、2013年度を基準年度として2030年度までに40%以上削減することとしています(図1)。
推進計画は、条例で定めた目標の達成に向けて、総合的に施策を進めていくためのプランです。
この中では、部門別に2030年度目標削減率を設定し、取組を進めることにしています(表1)。
他にも、例えば再生可能エネルギーについて、2030年度に「府内の総電力需要量に対して府内の再エネ発電電力量の割合を25%以上にする」「府内の総電力需要量のうち、再エネ電力の使用量を35%以上にする」といった目標を示しています(表2)。
■京都府の再エネを増やしていくにはどうしたらいいでしょうか。
現在、京都府内の再エネ電力の供給の大部分を支えているのは、「太陽光」と「大規模水力」です。
今後は「風力発電」や「小水力発電」、「木質バイオマス発電」など、様々な再エネの導入促進が必要と考えています。
もちろん、再エネを普及していくために自然環境が悪くなった、なんてことにはならないようにしなければなりません。地域との共生が大事であり、適切な保守点検による安心・安全な運営はもちろん、地域の防災力向上、活性化・雇用創出等、地域共生型での再エネの導入を推進する取組も求められますので、こうした観点での施策の充実も図っています。
■今回、新たに「適応策」が加わっています。
地球温暖化対策には、「緩和策」と「適応策」の2つがあります。「緩和策」は、CO2の排出を減らすなどして地球温暖化の進行を食い止める対策のことで、「省エネ」「再エネ」の推進がその代表選手です。しかし、どれだけ急いで緩和策を実行しても、もはやある程度の気温上昇は避けられないと言われています。
そこで必要になるのが「適応策」です。気候変動によって、水害の増加、農作物の質や収穫量の低下、熱中症の増加など、様々な被害が発生すると考えられており、その悪影響を少しでも減らすための備えをしておく必要があります。
今年度、適応策の推進に向けて、京都府と京都市、総合地球環境学研究所が連携して、「京都気候変動適応センター」を立ち上げる予定です。気候変動に起因する環境への影響や変化等の情報収集・分析・発信を行っていきたいと考えています。
■2030年の京都府は、どんなふうになっているでしょうか。
2030年まではあと9年しかなく、それまでに40%以上の削減を実現するには、家庭や企業、自治体が、それぞれの立場で、徹底的に省エネの推進や再エネの活用・導入を加速することが必要です。そのようにして2050年の脱炭素社会に向かっている京都府の姿は、例えば…
・建物の屋根や駐車場などに、当たり前のように太陽光発電のパネルが設置され、再エネ電気が利用されている
・新築の建物は、ZEB・ZEHなどの環境性能の高い建築物が標準になり、便利・快適・健康的な暮らしや、高度なエネルギーマネジメントを実現している
・充電設備等がより一層充実し、EV等が本格的に普及している。
・地域協働型の再エネを地域で利用する「再エネの地産地消」が進み、地域経済が元気になる
・気候変動に適応した栽培技術の導入等により、京都オリジナル品種が開発される
・詰め替えや量り売りが主流となり、プラスチックごみが激減する
・企業では、SBT(※1)、RE100(※2)等の環境経営により、コスト削減と競争力の向上が進んでいる
このような社会が実現できていればと思います。
■2030年に向けて、いま(今年度も含めて)京都府が重点的に推進している取組をご紹介ください。
○家庭向け・事業者向け
再エネについては、これまでも実施してきた家庭及び中小企業向けの太陽光・蓄電池導入支援や、事業者・市町村向けの太陽熱・小水力などの再エネ導入の支援等に加え、今年度は新たに家庭向けの太陽光発電初期投資ゼロ促進事業に取り組んでいます。
また、緩和策については、引続き、大規模事業者向けには、事業者排出量削減報告・計画制度等により削減を促進し、中小企業向けには省エネ設備更新の支援などに取り組んでいます。さらに、今年度から新たに、企業グループで取り組むCO2排出削減チャレンジ支援事業、ESG投資の促進に向けた研究事業などにも取り組んでいきます。
○熱中症予防対策(適応策)
近年、猛暑の影響で高齢者を中心に熱中症で救急搬送される人が増えています。昨年6~9月に京都府内で熱中症による救急搬送された方は、1,509名にものぼります。
そこで今年度、適応策のひとつでもある熱中症予防対策に力を入れており、様々な団体と連携して啓発を進めています。ぜひみなさんも、暑さ指数(WBGT)や熱中症警戒アラートを確認いただいたり、周りの方へ「エアコンをがまんしたら危険」という積極的な声掛けをしていただければと思います。
熱中症予防対策が当たり前になり、『熱中症による死亡者ゼロ』を目指していますので、ご協力をお願いいたします。
【暑さ指数(WBGT)など具体的な対策を、ぜひ京都府ホームページを見てチェックしてください】
http://www.pref.kyoto.jp/tikyu/adaptation/heat_stroke_wbgt.html
○脱炭素社会の担い手づくり
そのほか、これから脱炭素社会の主役となる子どもや若者を、環境人材として育成していくことにも力を入れています。
例えば、
・小学生を対象とした「めざせCO2ゼロチャレンジ!」
…省エネ実践だけでなく、家族で脱炭素の未来について考えていただき、未来を想像したり、脱炭素について学習
https://www.kcfca.or.jp/project/natuyasumi/
・府内の高校生を対象とした気候変動学習プログラム
…気候変動をテーマに、著名な講師を招いた勉強会ののちに、自分たちでアイデアをまとめて発表
https://eco-study.kyoto/kanfes2020/event/1.php
・大学生を中心とした「WE DO KYOTO!ユースサポーター」
…ラジオやSNSを通じて発信するなどの環境啓発活動を展開
https://www.pref.kyoto.jp/tikyu/wedokyoto.html
(ラジオ企画)https://eco-study.kyoto/kanfes2020/event/3.php
こうした取組を通じて、環境問題を「自分ごと」ととらえる人の輪がどんどん広がっていけばと思います。
■最後に一言メッセージをお願いします!
最近ではテレビや新聞で「脱炭素」という言葉を見聞きしない日がないほど、頻繁にこの話題が取り上げられるようになりました。
こうした関心の高まりは、温暖化対策の進展にとって大きなチャンスだと思いますが、一方でそれだけ環境危機が深刻化しているとも言えると思います。
2050年の脱炭素社会の実現には、ライフスタイルや産業構造などの大きな転換が必要であり、私たち一人ひとりが問題をよく知り、ともに考え、どのような社会の姿や暮らし方を「選択」していくべきか、話し合っていくことが大切だと思います。
みなさんと一緒に、脱炭素型のステキな京都の実現に向かう流れをつくっていければと思っています。
■ありがとうございました!
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- 京都府地球温暖化対策推進計画 についてはコチラ
http://www.pref.kyoto.jp/tikyu/suishinkeikaku2021.html
- 京都府再生可能エネルギーの導入等促進プラン(第2期) についてはコチラ
https://www.pref.kyoto.jp/energy/action_2021_public.html
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(※1)SBT
Science Based Targets:『2℃目標(1.5℃目標)』が求める水準と整合した、企業が中長期的に設定する温室効果ガス削減目標と、この目標が示す社会の実現に資する目標設定を促す枠組み。
(※2)RE100
Renewable Energy 100%:自然エネルギー100%での事業活動を行うという宣言をした国際的な環境イニシアチブ(企業の集団)。
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