【特集】京都府温暖化防止センター 設立20周年イベントを開催しました
京都府温暖化防止センター設立20周年イベントを開催しました
京都府地球温暖化防止活動推進センターは、2024年1月16日(火)に設立20周年記念イベント「気候変動と京都府の温暖化防止活動のこれから」を開催しました。
第1部では、これまでの当センターの活動を振り返ったあと、京都府の「西脇知事と行き活きトーク」として、京都府地球温暖化防止活動推進員・関連団体・センターの現在の活動の様子やこれからの活動についてのトークセッションを実施しました。
第2部では、交流会を実施しました。
本記事では、トークセッションの概要を簡単にご紹介します。
【トークセッション】第89回 西脇知事と行き活きトーク
登壇者
西脇 隆俊 氏(京都府知事)
葛山 知佳子 氏(京都府地球温暖化防止活動推進員)
味田 佳子 氏(京都府地球温暖化防止活動推進員)
木原 浩貴(温暖化防止センター副センター長、たんたんエナジー株式会社)
田浦 健朗(温暖化防止センター副センター長、認定NPO法人 気候ネットワーク)
※進藤天真氏(京都府地球温暖化防止活動推進員)は、登壇予定でしたが、当日は体調不良のため急遽ご欠席となりました。
≪ごあいさつ≫
■西脇知事
- 地球温暖化は我々の生活にも大きな影響を与えている。
- 国連事務総長も地球沸騰化の時代と言われ、昨年(2023年)は観測史上もっとも暑い夏になった。
- 京都府は「共生による環境先進地・京都の実現」として、2030年度までに2013年度比で温室効果ガス46%以上削減を目指している。温暖化対策を根付かせていくことが重要。
≪普段の活動と課題≫
■葛山さん(推進員)
- 普段は株式会社リビングエフエム「FM845」で、ラジオ番組の制作やパーソナリティ等をしている。環境省のクールチョイス啓発を担ったことがキッカケでセンターのことを知った。
- もっと知識を深めたいと推進員になり、推進員活動や研修会で知った正しい情報を、ラジオを通じてお伝えしている。京都府のWE DO KYOTOユースサポーター(大学生)の番組制作もお手伝いしていて、若い目線の発信も、一緒にさせていただいている。
- 中学生と小学生の娘と一緒に、家庭内で出来る脱炭素の取組(待機電力のカットや窓断熱等々)は可能な限りしている。日常のルーティーンにすれば負担感もなく、楽しみながらしている。近くに伏見区のヨシ原やさすてな京都もあり、子どもたちと楽しく学んで地球に親しみを感じている。
- ラジオ等で伝えるときに、真正面から伝えてもなかなか人が動かない。どういう風に伝えたら人や世の中が動いていくのか、悩みながら日々活動をしている。
■味田さん(推進員)
- 京都府北部で、宮津・京丹後・伊根・与謝野の二市二町をつなぐ広域のネットワークで活動。地域の子どもや親子を対象にしたエコ体験ツアーなど、地域の豊かな自然や資源を地域の子どもたちに知ってもらう活動を中心に行っている。
- 丹後地域では約20年前から天ぷら油の回収をしてきたが、昨年は京丹後市の企業さんによってバイオ燃料にするプラントができてリサイクルが可能になった。次はそのバイオ燃料をどう地域で使っていくのかが課題。
- 丹後地域では人口が減っている。公共交通も減り、今までバス通学していた子どもを親が自家用車で送らないといけないことも。また、一方で、人口減が進む丹後地域でも、三世代同居などが減りアパート建設が増えている。部屋の数だけ室外機が並んでいるのを見ると、電化製品は省エネ化しているとはいえ、これで電気は減っていくのかな?と感じている。
■西脇知事
- 行政が発信するよりも、ラジオの方が発信力があるので引き続き協力をお願いしたい。
- 私も先日WE DO KYOTOユースサポーターと温暖化防止のCM作りをした。若い大学生の時に関心を持ってもらうことは非常に重要。
- 子どもさんへの環境教育も大切。少し違う話だが、東日本大震災でも子どもたちは避難訓練通りに行動して助かった事例がある。環境もまさに同じで、小さい時から意識づけすることで体に染みつくのだと思う。
- アパートの話にもあったが世帯が増えると一人あたりのエネルギー消費量も増える。世帯分離、人口減少、空き家の問題など、いろいろあり、私も勉強していきたい。
■木原(副センター長、たんたんエナジー)
- まずは副センター長として、20年間、一緒に活動してきた皆様に感謝を申し上げたい。例えば夏休み省エネチャレンジも、家電省エネラベルも、皆様の活躍があったからこそ広がった。
- 現在は、エネルギーの地産地消を地域で行う仕組みが必要ということで、センターから派生する形で「たんたんエナジー」という会社をつくり、福知山市からの出資も受けて、丹波丹後地域で事業を行っている。
- 福知山市の小中学校と市役所本庁舎、福知山城などは全て再エネ由来・CO2排出ゼロの電気を使っていただいている。
- 福知山市の公共施設に、太陽光&蓄電池&電気自動車(V2H)を導入した。市民出資や地元の金融機関からの借り入れ等で設置し、福知山市は初期投資不要(電気代で支払う形)。地域の方に(出資金や利子を)お返しする形で再エネを増やし、防災力を高める取組をしている。
- 課題は、地域で再エネが今後足りなくなることが分かっているが、放っておいても再エネは増えないこと。市町村や中小企業などの需要家が再エネ普及にコミットする機運を高め、再エネ導入を支える仕組みづくりが必要だが、どうやったらよいか悩んでいる。また議論していきたい。
■田浦(副センター長、気候ネットワーク)
- まずは、気候ネットワークのことから紹介したい。設立のきっかけはCOP3。現在、COPでの国際合意をより良いものにするための活動、国の政策や対策の調査や提言、京都府や基礎自治体との連携や支援、コーディネート等の活動をしている。国際的な動向を国や地域に伝え、地域の活動を国や世界に反映させている。
- センターのこれまでの活動で話が出てきた省エネラベルや市民共同発電所作りは重要な取り組み。地域の取組をセンターが横展開して、根付かせ、京都全体の脱炭素につなげていくことが必要。
- 再エネを増やす課題として、一つは「初期投資」の調整が難しく設置しづらい状況がある。また、再エネ設置への反対運動には「地域の人が意思決定し、地域の人にメリットが届く」ように条例や制度を整備する必要がある。それから、再エネに関する間違った情報がたくさん出ているので、「適切な情報を伝える」ことも必要。
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■西脇知事
- 市民共同発電所とは?
■田浦(副センター長、気候ネットワーク)
- ドイツやヨーロッパで始まった。市民や地域のメリットになるような形で、市民の出資等で発電所をつくるもの。京都でも「きょうとグリーンファンド」等が取り組んでいる。(資金集めの方法は、)最初は寄付の形で、最近は出資など様々な形に変わってきている。
- 太陽光売電の買取価格が下がって発電所づくりも難しくなってきているので、後押しする仕組みが必要。
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■西脇知事
- 小中学校の太陽光発電設備の設置の将来性は?
■木原(副センター長、たんたんエナジー)
- どんどん広まるべきと思う。課題がいくつかあり、一つは屋根の防水工事との兼ね合い。防水工事と太陽光発電設置を長い目で計画しておけば進めていける。
- また、夏休み等は発電してもその場で使えず、電気が余ってしまう。それを別の施設で使う仕組みができれば、たくさん展開していけると感じている。
■西脇知事
- 蓄電池の技術開発が進むと(状況は)劇的に変化する?
■木原(副センター長、たんたんエナジー)
- 蓄電池設置が広がると良い(余剰電力や電力需給等の)調整にもなると思う。
- 現状は、小学校に蓄電池をたくさん入れると値段が高くなる。今は、「少しの蓄電池」&「電気自動車を蓄電池代わりに使う」という組み合わせが良さそう。
≪2030年までに46%以上の削減、今後の取組≫
■葛山さん(推進員)
- 2030年には上の娘も成人、2050年には子育て世代。未来をつくっていきたい。
- 子ども達に、地球を感じるような自然体験をたくさんさせてあげたい。昨年夏に娘と立山に行き、ちょうど火山性ガスが強く噴き出すそばを通った。娘は怖がったが、きっと動物的な本能で地球と対峙したのだと思う。46億年の地球の歴史の果ての今ということを見れば、人間活動の責任も子どもなりにとらえるだろうし、長い広い視野で気候変動に向き合えるような体験をさせてあげたい。
- もしできれば、課外活動で学校がお休みにならないように、単位認定のような仕組みがあるとうれしい。
- 30~50代の働き盛りの同世代は忙しいが、なんとか社会参加して子どもたちに良い刺激が与えられるような社会を作っていきたい。
■味田さん(推進員)
- たくさんの人が一丸となって取り組まないと解決できない問題。「一部の意識が高い人達が環境活動をしているという雰囲気」を無くしたい。温暖化という切り口やCO2削減の数字を追う活動は少し伏せ気味にして、楽しく地域が元気になる活動をしていると、結果として温暖化対策になったねという方向で活動をしたい。
- 丹後で実施している子ども向けエコ体験ツアー、伊根の漁師さんとの交流などの体験に、南部の子どもたちにも参加してもらえればと思った。南部も北部も一緒になって、京都府の豊かな自然に触れてもらう活動ができたら。
■西脇知事
- 自然に触れるというのは、「数字を追うのではなく」にも通じるかもしれない。
- 自然環境は、本来のありのままの自然と、里山のような少し人間が手を入れて守っている自然があり、どちらも大切。私も小学校の時にカブトムシを捕ったりしていた。自然体験や課外授業などが色々とできればと思う。
- 一方で、先生方も忙しく働き方改革もある。子どもの数が減っているが、NPOや大学生などが子どもと活動する可能性などを考えていきたいと思っていますので、みなさんにも環境面からご協力いただきたい。
■木原(副センター長、たんたんエナジー)
- 「世代間の公平性を考えよう」と本気でお伝えしていきたい。今日登壇予定だった進藤さんたち若者や学生が、街に立って気候変動を何とかしてくれと訴えているが、彼らが社会に出てから対策をしようと思っても、もう間に合わない。今の大人が何とかするしかない。現在のエネルギー高騰対策で国の補助金は10兆円を超えていが、これも結局将来世代が支払うことになる。大人がどう振る舞うか、真剣に考える機会が必要。
- エネルギー地産地消のモデルを作りたい。今、市町村が、昼間の余剰電力を買い取ってくれるところが無くて、再エネ設置が進まないという課題を抱えている。余った電気を別の場所で使う仕組みが必要だが、たんたんエナジーだけでは他地域までカバーできない。仕組みづくりが必要。
- 中間支援としてのセンターの役割を考えたときに、市町村支援の仕組みをつくりたい。ヨーロッパには、センターのような団体が人手不足の市町村を支えて伴走支援する仕組みがある。日本でも中間支援組織が注目されている。日本でモデルとなるのは京都でありたいし、みなさんと作っていきたいと思っている。
■田浦(副センター長、気候ネットワーク)
- 化石燃料を使わずにもっと豊かな生活・仕事をしていくという2050年脱炭素をイメージするのは難しいかもしれないが、一方で「今ある技術を使って2050年に脱炭素は可能」という調査結果がある。しかしそれには、今導入されている技術の製品・設備がスピード感をもって普及する必要がある。スピードアップできるシステム化が問われている。京都でも進めていけたら。
- 担い手がまだまだ足りないので、増やす必要がある。京都には大学や研究機関があるので、脱炭素に関する教育や、仕事に繋がるルート付けが必要なのでは。
- 世界では「公正な移行」が重要な言葉になっている。化石燃料関連の仕事が減り、従事している人が(転職する際に)より働き甲斐がある仕事(=ディーセントワーク)に移行していこうという考え方。京都でも整備していければ。
- 京都府センターは良い活動をして、先進的な事例もつくってきたので、果たすべき役割を担うことができる体制になることを期待している。
■西脇知事
- 世代間の公平性の話は、環境問題にとどまらず、年金や社会保障など、色々なことに通じる。現役世代が日本や京都を、持続可能なものとして残していく責務があり、これは非常に重要。
- 市町村支援についても、林業の分野では、市町村にエンジニアがいない等の人手不足をサポートセンター等で一括でやっている。環境分野も同様の流れになっていくのではと思う。
- 脱炭素社会の実現は、環境に関心のある方だけでなく、府民ひとりひとり、企業、専門家、全ての方が一定の方向を目指して活動しないと実現しない。行政だけで出来ることは限られているが、コーディネートする役割は重要。京都議定書発祥の地として、京都府がリードしていきたいという思いがある。
- 地球には何億年もの歴史があり、持続可能なものとして地球を残していくのは、今ここに生きている我々の責務。引き続きご尽力を賜りたい。
≪会場からの声≫
■参加者(推進員)
- 2期から推進員をしているが、私はもう80歳を超えている。ほかにも長く活動している方がたくさんいる。若い人に推進員になって活動してもらうには、どうしたら良いか考えてほしい。
■木原(副センター長、たんたんエナジー)
- 例えば、大学の先生と連携して一緒に現場に入っていく楽しいプロジェクトを作っていければ、学生さんに大学を休んで活動してもらう必要がなく、一つの解決方法になるかもしれない。
- 大学の先生方ともつながりをつくり、一緒に活動していくことを、あらためてやっていきたいと強く思った。
■西脇知事
- 若い人には関心が高い人がいて、自分事と考えてもらっている。そこに、推進員の役割や活動内容という情報をきちんと伝える必要がある。また、若い人たちの問題意識に沿った活動になっているのか、我々も見直しながらアプローチする必要がある。
- 河川敷のごみ拾い活動等で、大学のゼミの単位になるというものもあるようだ。そのようなこともうまく組み合わせできれば。
- 地域課題解決は、大学にも色々なことをしてもらっている。環境問題についても巻き込んでいきたい。
- 推進員の役割や活動内容などのPRもがんばるので、引き続きアドバイスをお願いしたい。
<以上>