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【10】高気密住宅は息苦しくない

高気密住宅は息苦しくない

高気密住宅は「密閉空間、換気不足、空気が流れない、息苦しい、結露しやすい、扉が重たくなる」と間違ってイメージされることがあります。「高気密」という単語をみて「3密」を連想する方もおられるかもしれません。

実際は、「高気密でないとちゃんと換気ができない」ことがあります。

住宅の話は、いつ・どのように建てられたのかで条件が全然異なり、情報も複雑で、正直難しいなあと思います。
難しいけれども、毎日の暮らしと健康に大きく関わる大切なこと。コロナ対策にも換気は重要です。住宅と換気のポイントを確認すると、高気密高断熱住宅(=省エネ住宅)は息苦しくないということが分かります。

●以前は「自然換気」と「部分換気」

日本では昔は「室内面積の20分の1の面積の開口部を設けて、自然換気しよう」というのが、基本的な考えでした。
ただし、台所のガスコンロの上やトイレなど、空気が汚れやすい場所には換気扇をつけて「部分換気」を行っていました。

そのうち気密性の高い住宅が作られるようになってきて、シックハウス症候群(化学物質過敏症)の問題が起こるようになりました。
室内の空気は時間が経つとだんだん汚れてくるため(人の呼吸によるCO2、建材や家具で使われている接着剤の揮発、布団などからのチリや埃など)、適切に換気することが必要です。

そこで、自然換気ではなく「建物全体の換気計画を立て、換気設備(注1)を使って家中を効率的に換気しよう」という考えが主流になりました。

●換気設備を使った「計画換気」

2003年7月の建築基準法改正で換気設備の設置が義務付けられました。シックハウス症候群の対策が主な目的で、住宅等の居室は、1時間で部屋の半分以上の空気が入れ替わるようにしなければなりません。

つまり、これ以降に建てられた住宅は「24時間換気システム」をきちんと稼働させていれば、窓を開けなくても2時間ですべての空気が入れ替わり、しっかり換気ができます。

●計画換気では気密性が高い必要がある

気密性が低いと隙間風が入ってきます。隙間風が体に当たると、感覚的には換気されていると思いがちですが、家全体がまんべんなく換気できているわけではありません。
ファン(換気扇)を動かしても、近くの場所から隙間風が入ると「ショートサーキット」を起こしてしまい、住宅の中で「空気の換気ができている部分」と「空気がよどんでしまって換気ができない部分」が生じてしまいます(図を参考)。

ショートサーキット

計画換気で効率的に住宅全体の換気をするためには、気密性を高くする必要があります。

高気密と換気

●高気密住宅は、断熱の効果も高めて省エネになる

壁と屋根の間や窓の取付箇所などは隙間ができやすいので、高気密住宅は精度の高い建材や防湿シート・断熱材・気密テープ等でしっかりと埋めます。

壁の中に断熱材をしっかり使った住宅でも、気密性が低く隙間風が多いと、冷暖房時の熱の出入りも多くなり、せっかくの断熱効果が少なくなってしまいます。

高気密と高断熱はセットで省エネ効果が高まります。

●省エネ住宅

日本の住宅で現在使われている「次世代省エネルギー基準」は、じつは1999年3月に改正されたものがベースとなっています。しかも2020年に義務化される予定が見送られました。

光熱費がもったいないからと我慢してきたのが、これまでの日本の省エネです。
しかし世界の(特に先進国の)省エネは、建物の性能を良くすることでエネルギーの効率を上げて、「普通に暮らしていれば省エネ&健康&快適」な生活を目指しています。

室温と健康

効率良く換気がされ、室内はきれいな空気。そして冷暖房効率も良く、室温も保たれて健康に。
脱炭素社会に必要な省エネ住宅は、高気密&高断熱&換気のバランスが良い住宅です。
さらに、生活時のエネルギー収支をゼロにするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や、建設から廃棄までのトータルCO2収支マイナスをめざすLCCM住宅(Life Cycle Carbon Minus:ライフサイクルカーボンマイナス住宅)も注目されています。

新築やリフォームの機会は多くはないからこそ、良い選択をしたいですね。
これからは日本でも、高気密高断熱住宅がもっと必要になります。

誤解されがちな高気密住宅。ぜひ周りの人にも「高気密住宅はきちんと換気ができている」ということを広めてくださいね。

高気密高断熱の家

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【注1】換気設備とは

  • ファン・換気扇…以前は、ガスコンロの上やトイレや浴室など、部分的な換気をするために、排気のファンが使われていた。24時間換気システム(第一種換気)の場合、家全体を効率的に換気をするために、吸気と排気の両方にファンが使われている。
  • 吸気口…空気を吸い込む場所。壁や天井などに取り付けられる。吸気口にフィルタを取り付けると、花粉などが入りにくく、きれいな空気を家に入れることができる。
  • 排気口…空気の出口。屋根などの上部に取り付けてあることが多い。
  • ダクト…空気を運ぶ管。各部屋にダクトを配置して空気の通り道を確保しているため、窓やドアを閉めていても換気ができる。
  • 熱交換器…吸排気口の近くに取り付け、出ていく空気と入ってくる空気を混じらないように隣り合わせて通し、「空気そのものは混ざらないが温度(熱)は移動する」ようにする。空調負荷を軽減できる。

【参考】

健康で快適な住宅を作るため、高気密高断熱住宅やZEHなどの普及を頑張っているたくさんの工務店さんのホームページ等の情報を参考にさせていただきました。